成年後見制度Q&A(Part6)

26.本人がお亡くなりになったとき、後見人は何ができるのですか?

本人の死亡により、成年後見の業務が終了しますので、後見人には、死後事務を行う権利も義務もありません。

原則、親族が行うこととなります。

 

しかし、実際には、身寄りのない方や親族と疎遠な方、遠方に居住されている方については、後見人が事務を行う場面も多々あります。

 

葬儀費用の支出や入院費、施設費の精算、役場への死亡届、葬儀・供養など必要な場面で関係者の方々と連携しながら対応することになります。

 

27.申立の為に必要な診断書は誰に頼めばよいでしょうか?

通常、本人の主治医などに作成してもらいます。特に精神科医でなくても構いません。

また、最新の診断書を裁判所や裁判所ウェブサイトなどで確認してお願いするようにしてください。

診断に慣れていないお医者様に依頼する場合には、裁判所ウェブサイトから「成年後見制度における診断書作成の手引き」をダウンロードしてお渡しすると良いかも知れません。

 

28.申立に関する費用は誰が負担するのですか?

申立に関する費用は、原則、申立人の負担となります。

しかし、申立にかかる手続き費用については、本人負担とする事も可能です。

申立にかかる手続き費用の例:申立印紙代、後見の登記手数料代、郵便切手代、鑑定費用等

 

29.私が成年後見人に就任しましたが、本人の病院の付き添い等をしなけれいけないのでしょうか。

成年後見人の職務は、本人の権利擁護と法律行為の支援です。

本人が病院に通院する必要がある場合に付き添うことや介護をすることは事実行為であり、後見人の職務ではありません。

 

この場合は、介護タクシーと契約したり、付添人契約やボランティアの依頼などにより付き添いを依頼するのが仕事内容となります。

 

30.後見人は医療行為の同意ができないと聞きましたが、万が一の場合はどの様にすべきですか?

成年後見人診療契約や入院契約を締結することや診療報酬の支払いをすることは権原内の行為であります。

しかし「医療行為の同意」は身体に対する侵襲を伴う事項であることから、成年後見人の権限外の行為であります。

 

そこで、万が一の場合は下記のとおり対応すべきと考えます。

 1.本人の同意を得る ~ 本人とコミュニケーションが可能な場合には、分かりやすく
             説明を行い、本人の意思を尊重すべきでしょう。

 2.親族、施設関係者から本人の状況を聴取し本人の意思を推測する
            ~ 本人とのコミュニケーションが困難な場合には、親族や施
             設関係者等本人の状況確認が出来る方から意見聴取を行い、
             本人の意思を推測すべきでしょう。

 3.親族等の関係者が以内場合 ~ 医療・介護・福祉関係者、親族等により合意形成の
                 場を設け、本人の最善の利益と合致するように判断
                 を行っていく。

 

31.施設入所されている方がおひとり様(身寄りがいない。親族が遠方にいる。親族と疎遠)です。本人が亡くなった後の処理がどうなるか心配です、、

下記の1、2、3の手続きを検討してください。

 

 1.死後事務委任契約を締結する。

   ~おひとり様を委任者、当事務所等を受任者とし死後に必要なあらゆる手続きを委任

    する契約です。役所手続き、葬儀関係の手続き、供養に関すること、遺品整理、
    債権債務の清算事務等をあらかじめ委任します。

 

 2.遺言書を作成し、遺言執行者を指定する。

   ~自己の財産は自分のために使って頂くのが一番です。それでも亡くなった後、全
    く財産を残さずに亡くなるということは難しいことです。残った財産については、
    遺言書を作成し、お世話になった方や団体に寄付するのも一つの方法です。
    その際、遺言執行者を選任しておくと遺言書の内容を実現して頂くことが可能  
    となります。

 

 3.上記1,2とあわせて任意後見契約を締結する。

   ~自分自身が判断能力のあるうちに、万が一のことを信頼できる方にお願いして
    おく契約です。

 

32.後見人の横領が心配です。任せて大丈夫ですか?

実際、2015年度で約30億円ものお金が成年後見人によって不正に使用されているという最高裁の調査があります。

 

内訳としては、弁護士・司法書士等の専門職による不正額が約1億1,000万円、親族等が約28億6,000万円となります。

親族による不正の割合が圧倒的に多くなっています。本人のために使われるべきお金ですので、信頼できる専門家にお願いすることが必要です。

 

33.後見制度支援信託ってなんですか?

親族後見人による不正を防ぐために「後見制度支援信託」という制度が始まりました。

 

具体的には、日常生活に必要な金額(約200~250万円程度)を手元に置き、それ以外のお金を信託銀行に預けるという制度です。

預けたお金は家庭裁判所の指示がないと払い戻しが出来ません。

佐久の裁判所では、親族後見人で本人資産が1,000万円以上ある場合に制度の利用が検討されている様です。